きょうの音楽 #629

白いくつ下は似合わない / アグネス・チャン

これぞユーミンの世界。別れを経験した少女は、自分の中にある少女とも別れなければならない。

よく聞くと恋人は嘘は言ってないですね。そのあたりすごく計算された詩です。男に都合よく捨てられたと思わせる状況を排除してる。少女は恋人に「あの言葉は嘘だったの？」と聞くけれど、ほんとは気づいてる。「君とどこまでも歩きたい（=願望）」「今は君だけしか見えない（=永遠にとは言ってない）」とすることで、恋人は嘘をついていたわけではなく、ただ気持ちが変わってしまったのだということを強調してる。

ひとの気持ちは変わってしまうことを知った少女が、いつか自分もそうなるかもしれないという淋しさを歌っているのだ。きっと。「白いくつ下はもう似合わない」という喩えが素晴らしすぎる。

「なくしたものなど何もないけれど」は、人はこうして大人になるという無常。

「くつ下」を漢字にして「白い靴下はもう似合わない」にしてしまうと靴下の印象が強すぎる。淡い乙女心を歌うにはフワフワした「くつ下」がちょうどいい。



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